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戦争法廃止をめざす東大有志の会のブログです

安保3文書と一体の日本学術会議法改悪に反対する声明

                  安保3文書と一体の日本学術会議法改悪に反対する声明

 今年1月23日から始まった国会(第211回国会)が6月21日に閉会となりました。今国会では、昨年末に閣議決定された憲法違反の安保3文書(「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」)を実践するために、大軍拡予算、軍拡財源法・軍需産業支援法といった大軍拡を加速する法律が次々と成立しました。私たち「戦争法廃止をめざす東大有志の会」は、安保3文書とそれに基づく大軍拡予算・法律に改めて抗議の意を表します。

 大軍拡とも深く関わる動きとして忘れてはならないことは、政府の日本学術会議法改定の企てでした。それは、日本学術会議の会員選考に政府や産業界などの「第三者」を参画させることを法律に明記するものであり、今後政府が日本学術会議の会員選考や運営に露骨に介入することにより、日本学術会議の独立性と「学問の自由」を否定しようとする策動でした。安保3文書には「安全保障分野における政府と企業・学術界との実践的な連携の強化を進める」など軍学共同の推進が明確に打ち出されており、政府にとって軍事研究に一貫して反対してきた日本学術会議の存在とその独立性が軍学共同の推進の障害となると考えた結果、日本学術会議法改定案を出してきたのです。私たちは、政府による安保3文書に沿った軍学共同の推進と日本学術会議への介入の企ての継続は、国家総動員体制構築のための軌を一にした動きであり、歴史の過ちを再び繰り返すことに直結すると考えます。

 しかし結果として、政府は4月20日に、今国会での日本学術会議法の改定を見送りました。これは、何よりも日本学術会議が毅然とした姿勢で政府に対応し、第187回総会では全会一致で、日本学術会議法上、最も強い意思表示である勧告「日本学術会議のあり方の見直しについて」(2023年4月18日)を採択した結果です。また、各学協会の声明、歴代の学術会議会長5名の連名による「根本的再考」を求めるアピール、日本のノーベル賞等受賞者8名の熟慮を求める声明、海外のノーベル賞受賞者61名連名による日本のノーベル賞等授賞者8名の声明への支持、海外アカデミーの代表者からの学術会議の独立性への支持、つまり学術会議の独立性を守るべきだとの内外のアカデミアからの強い支援があり、これに加えて市民の強い批判が続き、広範な世論が法案上程を見送りに追い込んだ結果と言えます。

 政府は、今国会への日本学術会議法改定案の提出を見送りましたが、日本学術会議への介入を断念したわけではありません。政府が現在の大軍拡への道をつき進む限り、今後、今回と同様に、日本学術会議法の改定案を国会に提出する可能性は拭い去ることができません。戦争遂行には言論の自由、学問の自由、研究の自由を制限し、研究者を軍事研究に動員する必要があるからです。

 梶田隆章日本学術会議会長は4月27日、メッセージ「学術の発展とより良い役割発揮のために、広く関係者を交えた開かれた協議の場を」を発表しました。私たちは、政府がこのメッセージを踏まえて、まずは日本学術会議としっかり対話することを求めるとともに、6名の任命拒否の撤回と日本学術会議への介入を止めることを強く求めます。

 日本学術会議は、前身である学術研究会議が戦争に協力した過ちの反省の上に、1949年に発足しました。日本学術会議が「戦争を目的とする科学の研究には絶対に従わない決意の表明」(1950年)、「軍事目的のための科学研究を行わない声明」(1967年)、そしてそれらを継承する「軍事的安全保障研究に関する声明」(2017年)を発出してきた背景には、科学者による戦争協力への反省という戦後日本の学術の原点がありました。

  「新しい戦前」と言われる今、戦争遂行の道具=人を殺傷し施設を破壊する武器の開発とそれにつながるデュアルユース技術の研究に協力するのか否かが、教育研究機関、企業、学協会、そして研究者一人ひとりに問われています。

 私たちは大軍拡の加速、軍学共同の深化、日本学術会議法改悪に断固反対するとともに、これらを阻止するために力を尽くします。

                       2023年6月25日

                                                                          戦争法廃止をめざす東大有志の会