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戦争法廃止をめざす東大有志の会のブログです

声明 日本学術会議つぶしを阻止し、平和と学問の自由を擁護しよう

声明

 日本学術会議つぶしを阻止し、平和と学問の自由を擁護しよう
                        安全保障関連法に反対する学者の会

日本学術会議は、2022 12 8 日および 21 日に臨時総会を開催し、12 6 日および 21 日に内閣府が示した「日本学術会議の在り方についての方針」とその「具体化検討案」 の説明をうけ、審議検討を行いました。総会は、同方針が日本学術会議の職務の独立性およ びその保障としての会員選考の自主性に照らして疑義があり、「日本学術会議の存在意義の 根幹」に関わるとして、政府に再考を求める声明を採択しました。私たち安全保障関連法に 反対する学者の会は、この声明に賛同し、以下のように意見を表明いたします。

2020 10 月、菅前首相が第 25 期会員候補者 6 名の任命を拒否したことに対して、私た ちはこの措置が日本学術会議法に反して違法・不当であることを批判し、同措置の明確な説 明と 6 名の即時の任命を要求しました(10 14 日抗議声明)。さらに岸田内閣の発足に際 しても政権に同じ要求を行いました(2021 10 1 日声明)。この間、政府は、世論によ って任命拒否が大きく批判されるなか、逆にこれを利用して学術会議の改革を言い出し、 2020 12 月に自民党プロジェクトチームは、学術会議を国の機関から民間の法人に変更 するなどの改革案を発表します。これに対して、学術会議は、日本学術会議法が保障し、か つ、国際的にも承認されるナショナル・アカデミーとしての 5 条件の維持を大前提とする 改革案を提示し、すでに自主的な運営の改善を進めてきました。

今回の内閣府の方針(以下「方針」)は、学術会議改革の改正法案を今月開会される 2023 通常国会中に提出すると宣告し、具体案を示しています。その内容は、学術会議の自主改 革案を考慮せず、これまでの対話や合意も無視し、「国家機関としての存置」を認めつつも、 それ以外は自民党プロジェクトチーム案の内容を盛り込むものとなっており、実質的に「存 置」の意義を失わせるものです。さらには、法改正後 3 年ないし 6 年後のフォローアップ によって「存置」そのものを見直すことも明らかにしています。

「方針」は、任命制度の「適正・円滑化」を言い、あたかも 6 名の任命拒否は適正だった かのごとく構えていますが、任命拒否の違法性・不当性は揺るぎません。そのうえ、会員選 考のすべてに関し拘束力ある意思を表明できる第三者委員会の設置など、学術会議による 会員選考の自主性をふみにじる案を示しています。あまつさえ、学術会議によって本年秋の 改選のため次期会員選考手続が、現行制度のもとですでに開始しているにもかかわらず、1 年半ほどの会員の任期延長措置によって次期会員選考を新制度で行うことを断言していま す。問答無用の対応としかいいようがありません。

「方針」は、科学的助言機関である学術会議の組織と活動のあり方につき、法改正のため に様々な具体的な方策を提示していますが、そこでは「政府等と問題意識や時間軸等を共有」することが強調されています。法によって保障された学術会議の職務の独立性は、助言の前 提である「問題意識や時間軸等」が自主的に科学的見地により形成されることが当然であり、 国際的に認められた本質的なことがらです。にもかかわらず、「方針」はこれを無視してい ます。「方針」の種々の改革方策の狙いが、政府と問題意識や時間軸等を「共有する」との 名目で、その実、時々の政府の意向を忖度し追従する政府に使い勝手のよい科学者組織への 変質であることは、まったく明白です。

おりしも、岸田政権は、12 16 日「安保3文書」の閣議決定によって、「抑止力」たる 「反撃能力」と称して敵基地攻撃能力の拡大強化を防衛力整備の核心とし、増税や軍事国債 を財源とする防衛費倍増の計画を決定しました。日本は、これにより専守防衛をこえて他国 領域攻撃の軍事力を常備し、同時に防衛費について米中につづく軍事大国となります。国家 安全保障戦略は、「強化すべき国内基盤」に「知的基盤」をあげ、政府と企業・学術界との 実践的な連携強化を指示しており、軍需産業の振興とそのための科学技術の動員、軍事研究 の推進は主要課題とされます。憲法 9 条の平和主義は、安倍政権による集団的自衛権の制 度化に続いて決定的な危機に直面しています。

日本学術会議は、日本の科学者の代表機関として創設以来、平和と学問の自由を擁護し、 軍事研究を否定してきました。直近では、2017 3 月「軍事的安全保障研究に関する声明」 がこれを示しています。学術会議のこうした基本的立場は、岸田政権による「安保政策の大 転換」と相いれません。「方針」は、まさに「大転換」に適合的な科学者組織に学術会議を 改造することを狙いとし、そのような意味で学術会議つぶしを企図するものといわなくて はなりません。

私たちは、岸田首相に対して、6 名をただちに任命し日本学術会議との関係を正常化する こと、同時に自民党プロジェクトチーム案に依拠した学術会議つぶしの「方針」の撤回を要 求します。学術会議改革は、学術会議の自主改革を基本にして、広く国民との対話、そして 政府との協議によって進めるべきです。

安全保障関連法に反対する学者の会は、平和と学問の自由のために、市民とともに、安保 3文書の実現を許さない運動を急速に大きくひろげ、学術会議つぶしの法案が国会に提出 されるようなことになれば、これを断固阻止する闘いを進める決意です。

2023 年1月 14

安全保障関連法に反対する学者の会・呼びかけ人有志